活動実績

奈良SDGs学び旅

SDGs教育
2020年度

当公益社団法人は、持続可能な社会の創り手育成と県内観光産業の振興に向け、奈良を舞台とする新しい学び旅の企画・開発・発信に取り組んでいます。

持続可能な社会を創る新しい旅のスタイル

2015 年の国連サミットにおいて、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されました。SDGsは、持続可能な社会実現に向け、2030 年までの達成を目指す17の目標と169 のターゲットで構成されています。
翻って、奈良に目を向けると、そこには1,300 年前からの建造物、仏像、伝統行事、自然との共生の営み等が今も絶えることなく受け継がれています。東大寺の大仏様は752 年の建立以来2 度も焼失しましたが、そのたびに当時の人々の協力で復興されました。同じ東大寺の伝統行事である二月堂の修二会(お水取り) は、752 年以来一度も中断することなく続いています。また、奈良公園のシカは人を見ても逃げません。1,000 年以上にわたる人とシカとの共生の歴史がここにあります。
さて、修学旅行をはじめとするこれまでの奈良観光といえば、大挙してお決まりの観光スポットを短時間で見学して日帰り、というものでした。しかしながら、観光客は、今や単なる物見遊山ではなく、その地域の伝統や文化について深く学ぶことができる旅を求めています。であるならば、じっくり時間をかけて自然散策や施設回遊を深く体感・体験し、1,300 年以上も持続してきた奈良の魅力に浸りながら持続可能な社会への思いを巡らす、そのような新しい旅のスタイルを提案することで観光客のニーズに応えていかねばなりません。

産・官・学で推進協議会設立、国や自治体の支援金・補助金を活用

こうした背景から、持続可能な社会実現への次世代の育成とコロナ後における県内観光産業の振興に向け、「奈良SDGs 学び旅」の企画・開発・発信に取り組みました。
取り組み開始にあたり、奈良商工会議所 峯川郁朗専務理事を会長とする「奈良新しい学び旅推進協議会」(奈良商工会議所、奈良教育大学、奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合、奈良県ビジターズビューロー、奈良市観光協会、奈良県、奈良市、及び当公益社団法人で構成)を設立し、当公益社団法人が事業の全体企画や事務局運営等を担いました。一方、取り組みに必要な資金として、観光庁、奈良県及び奈良市からの支援金や補助金(観光庁「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業支援金、奈良県新型コロナウイルス感染症対策観光振興補助金、奈良市新型コロナウイルス感染症対策観光振興補助金)総額約2,000万円を活用しました。

「奈良SDGs学び旅」の開発と検証、ガイド研修、プロモーション

学び旅のプログラム開発

前述のとおり、「奈良SDGs 学び旅」は、旅行者が奈良をじっくり回遊しながら持続可能な社会に思いを馳せることを目的としています。この目的に合致したプログラムの開発のために、SDGs 達成の担い手を育成するESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)のパイオニアとして長年の研究と実績を有する奈良教育大学から、中澤静男准教授( 当公益社団法人理事)、大西浩明特任准教授、杉山拓次研究員の協力をいただきました。

具体的には、世界文化遺産に指定されている奈良市内の文化財を組み入れた「東大寺コース」、「ならまちコース」(元興寺とその界隈)、「春日山原始林コース」の3 つの学び旅コースに加え、観光客が各々の観光スポットを従来の物見遊山的なものの見方ではなくSDGs の視点で捉え直していただくための仕掛けを盛り込みました。①旅の始めに奈良教育大学のSDGs 講義を受講する②主体的で対話型の学び旅に適した少人数の班別編成にする ③各班にツアーガイド1 名が同行し学び旅の案内や質疑応答を担当する、がその主なものです。
一方、コロナ禍やコロナ後において安心で安全に学び旅が行えるよう、特定の時間帯や観光施設での密を回避するための各班の行程分散化モデルや、観光客やスタッフを対象とした約50 ページの感染防止マニュアルを作成しました。

東大寺 コースマップ

ワークブックの制作

「奈良SDGs 学び旅」をベースとした大人向けブックレット(55 ページ)と中学生向けガイドブック(65 ページ) の2 種類を制作しました。日本ESD 学会の前会長でもある長友恒人奈良教育大学名誉教授に監修いただき、奈良の歴史、自然、伝統や文化等の各分野・テーマに精通した15 名の研究者・専門家に、各々の魅力について執筆いただきました。
これらを、旅マエの事前学習、旅ナカの確認、旅アトの振り返りの各フェーズで活用することで、より有意義な学び旅となることが期待できます。また、旅ナカや旅アトで学んだことや気づいたことをすぐに書き込めるよう、随所にワーク(空白) 欄を設けました。

大人向けブックレット
中学生向けガイドブック

ツアーガイドのへの研修

奈良を訪れた観光客にSDGs の視点で捉え直した観光施設から持続可能な社会への思いを高めていただくためには、観光客に同行し各施設の案内を担うツアーガイトの役割が極めて重要です。そこで、2021年1月、地元奈良のガイド団体「なら・観光ボランティアガイドの会 朱雀」、「奈良まほろばソムリエの会」、「春日山原始林を未来へつなぐ会」のメンバーを対象に「奈良SDGs 学び旅」ツアーガイド研修を実施しました。実施にあたり、奈良教育大学からの協力をいただきました。
座学研修では、「SDGs とESD の基礎知識、奈良で学べるSDGs」「主体的・対話的で深い学びを引き出すガイド方法」の講義、また計2 回のフィールドワーク研修では、ならまちや春日山原始林を舞台に、「たくさん問いかけること」「教え過ぎないこと」等、座学研修で学んだガイドのコツやノウハウについて実地練習を行いました。受講したガイドからは、「SDGs の視点で奈良を見つめ直すことができた」「持続可能な奈良の魅力を多くの人に伝えたい」等の声が寄せられました。

SDGs座学研修
春日山原始林コース
フィールドワーク研修

モニターツアーによるプログラムの検証

「奈良SDGs 学び旅」プログラムの有効性を検証するために、奈良教育大学やガイド団体の協力の下、1月~2月にプログラムに則ったモニターツアーを計5回実施しました。
修学旅行を想定したモニターツアーには、大和郡山市立郡山西中学校の1、
2 年生計200 名に参加協力していただきました。また、研修旅行を想定したモニターツアーには、明日香村及び吉野町の観光関係者に参加いただきました。さらに、インバウンド富裕層を想定したモニターツアーも実施し、いずれのツアーも参加者からの満足度は高く、またアンケート分析を通じ課題や改善事項を整理することができました。

プロモーション活動

「奈良SDGs 学び旅」をより多くの方に知っていただくために、広報やPR 活動にも力を入れてきました。公式Webサイトの立ち上げ、更に3 本の学び旅動画や上記モニターツアーの動画等を作成。それらを公式Webサイト、YouTube、Twitterで配信しました。加えて、奈良新しい学び旅推進協議会の川井徳子実行委員長( 当公益社団法人専務理事) が、2 月2日にならどっとFM「ひるラジ784」、2 月15日にABCラジオ「ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です」に生出演し、「奈良SDGs 学び旅」の取り組みを紹介しました。
さらに、2 月26 日には『「教育」×「もてなし」=「奈良SDGs 学び旅」』と題するシンポジウム(基調講演及びパネルディスカッション)を奈良公園バスターミナルで開催しました。奈良が持つ観光・文化遺産や学びの場としての魅力とポテンシャル・その保全、おもてなしとは何かについて、それぞれの専門家の方に語っていただきました。参加者は、観光をSDGs 的視点から磨きなおすという新たなスタイルの「奈良SDGs 学び旅」について耳を傾けていました。

郡山西中学校 2年生
明日香村役場・観光関係者
ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です
奈良公園室 竹田室長 基調講演
パネルディスカッション
エバレット・ブラウン氏×谷良一氏×川井実行委員長

当公益社団法人は、今回の「奈良SDGs 学び旅」開発・検証で得た成果と課題を踏まえ、今後より多くの人々が「奈良SDGs 学び旅」に満足していただけるよう、その磨き上げと商品化、旅を演出するスタッフ人材の育成、広報・プロモーション等に取り組んでまいります。

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