活動実績

文化庁 日本博2.0 有形と無形の最高峰の文化遺産が融合する聖地「奈良公園」の国際ブランド構築・発信事業

観光
2024年度

令和6年度「日本博2.0」では、奈良公園を舞台に、有形・無形の最高峰文化資源が融合する聖地としての価値を再認識し、国内外へ発信する事業を展開しました。奈良公園が東大寺・興福寺などの寺院群と自然が共存する歴史的景観を今に伝えて1300年経ちましたが、それ以前より鹿と人間との共存、文字を持たなかった人々の歌や舞、口承、神事といった精神文化は、やがて文字の伝来とともに『古事記』『日本書紀』『万葉集』といった文字文化へと昇華され、それが形を変えながら今に伝えられつづけています。
本事業では、奈良にある有形の世界文化財に加え、祭りや行事などの無形文化財も含めた奈良公園の構成要素を総合的に捉え、日本独自の風景としての魅力を発信致しました。UNESCO無形文化遺産に登録された文化資源を中心に、国際ブランドとしての奈良公園の価値を高めるとともに、観光客や研究者との交流を通じて新たな視点を創出しました。今後、日本全体への波及効果を目指しています。

ユネスコ無権文化遺産とSSLとの関わり

(1)伝統的酒造り (2)和食:日本人の伝統的食文化 

奈良は、和食の原点とも言える食文化の歴史を誇ります。古代、朝廷や寺院での宴を通じて、調味料を用いた料理が進化し、五感で楽しむ食文化が育まれました。2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、奈良がそのルーツとして再評価されます。2022年に奈良県、正暦寺、菩提酛清酒研究会、奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合などが協働で「日本の食の聖地巡礼 NARA」プロジェクトが始動。さらに2024年には「伝統的酒造り」も登録されたことから、歴史に基づいた奈良酒と和食を体験するツアーを企画し、奈良の食文化は今、世界に向けて新たな物語を紡いでいきます。

(3)伝統建築工匠の技

奈良県には1993年にユネスコ世界文化遺産に登録された法隆寺など多くの文化遺産があります。当公益社団法人は、これらの文化遺産を支える伝統建築技術をユネスコ無形文化遺産に登録するため、シンポジウム開催や関係省庁への提言活動を行ってまいりました。2020年に「伝統建築工匠の技:木造建築物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。 その後もこれを新たな観光資源として捉え、天平時代の工人の真髄を故西岡常一棟梁から学んだ、堂宮大工 薬師寺石井棟梁が薬師寺を案内するツアーの開発に繋げました。

(4)能楽

奈良に根ざす能楽は、2008年に日本初のユネスコ無形文化遺産に登録された伝統芸能。700年以上前の大和猿楽四座に始まり、幽玄の美を今に伝えています。本プロジェクトでは、春日龍神の華やかな夜の演目鑑賞と奈良公園ゆかりの演目に基づく名所巡りを組み合わせた五感で楽しむ文化体験プログラムを開発。能面や衣装展示、演者との交流を通じて、枯淡の中に宿る深い心の境地を体感できる内容になっており、初めて能に触れる人にもわかりやすいガイドブックも開発しました。

奈良公園の再ブランド構築と発信

奈良公園は、東大寺、春日大社、興福寺、若草山などを含む広大な文化的景観を有し、1300年に及ぶ歴史を通じて日本の精神文化の中心として機能してきました。これらの歴史的・文化的資源は、単体としての価値にとどまらず、奈良公園全体としてのランドスケープの中で相互に関係し合い、重層的な文化的意味を形成しています。
当公益社団法人は、この奈良公園の本来的価値を国内外に発信することは、文化的側面の理解促進のみならず、ソフトパワーを通じた国際交流の深化、さらには観光・産業の活性化に資する極めて重要な取り組みであると考えています。

日本博2.0事業におけるコンテンツ制作

書籍型テーマブックレット及び動画の企画・制作

奈良公園全体の価値をインバウンド向けに分かりやすく物語化し、外国人にも伝わるよう、ブックレットおよび動画を製作した。これらのコンテンツは、奈良公園の歴史的背景、文化的意義、自然との調和を包括的に紹介し、訪問者が奈良の魅力を深く理解し、体験できるよう構成されている。従来の観光ガイドブックとは一線を画すため、童話や絵本、小説まで幅広い創作活動を手がける奈良在住の作家・寮美千子氏に企画・執筆集を依頼。翻訳と監修は万葉集研究者で日本の古典文学に深い知見を持つ翻訳家・詩人のピーターJマクミラン氏に依頼。

【企画・執筆】寮美千子氏
幼年童話から小説・絵本・詩・純文学・ノンフィクションまで手がけ、題材も先住民文化から宇宙天文まで幅広い。1986年、毎日童話新人賞受賞、童話作家としてデビュー。2005年、泉鏡花文学賞を受賞。奈良市在住。

【翻訳・監修】ピーターJマクミラン氏
アイルランド生まれ。杏林大学外国語学部・
国際協力研究科客員教授。専門は詩・翻訳・
現代美術。『英詩訳・百人一首―香り立つ
やまとごころ』で、2008年度日本翻訳文化特別賞、日米友好基金日本文学翻訳賞受賞。

【日本語字幕】①環境~鹿と人間の共存
日本の奈良では、なぜ鹿が人を怖れないのか?
その秘密とは?
奈良では、鹿が古くから「神の使い」とされて、人々と共存しています。鹿は自然を象徴する存在です。そのことにより、人間も自然の一部であるという気付きを与えてくれます。ウエストミンスター寺院のアビイロードのように、奈良は日本人の信仰の原点であることを教えてくれます。本シリーズの第一弾では、人と鹿が共に生きる理由を解説します。古代から続く奈良の魅力を一緒に探求しましょう!

【日本語字幕】②神話世界
なぜ奈良は「日本の始まりの地」なのか?
奈良は、日本国の歴史が始まった場所として知られています。壮大な神話を生み出した場所です。DNA考古学に基づいた人類の移動を神話に紐づけてあなたにメッセージを与えてくれます。奈良盆地の地理的特徴や、縄文・弥生・古墳時代を経て日本神話における天皇の伝説へとつながる歴史を紐解きます。

【日本語字幕】③神仏習合
なぜ日本人は仏だけではなく神々も大切に思うのか?
日本の奈良は、単なる歴史的な場所ではなく、神社とお寺が共存し、神々と仏が融合する日本独自の信仰文化が発展した場所です。奈良時代の国際都市・平城京の誕生から、現代に受け継がれる伝統まで、奈良で育んできた「共存の精神」が日本人のふるさととなりました。神と仏、人と自然が調和する「理想の庭」としての奈良の魅力をぜひ知ってください!

5つのモデルツアーの開発・実証

奈良公園を中心に神仏習合の歴史文化、鹿と人と自然の共生の歴史、伝統芸能などの文化遺産を体感できるツアーを開発し、英語・中国語のガイドブックと通訳ガイド付きで実施。全ツアーでアンケートとヒアリングを実施しました。

1-1「伝統的酒造り」と「和食」日本の食文化の「源」を体感する旅 「日本清酒発祥の地・正暦寺を楽しみつくす」

伝統の酒造りを象徴する特別な酒「菩提泉」の二度仕込みを体験していただきました。あわせて、正暦寺と酒造りの歴史に関する講和、正暦寺伝統の精進料理と菩提酛8種の飲み比べによるペアリングランチ、「酒づくり」にちなんだ書道体験をプログラムに組み込んで実証しました。(2025年1月25日(土)実施)

大原住職による講和
正暦寺伝統精進料理
書道体験
「菩提泉」二度仕込み

1-2「伝統的酒造り」と「和食」日本の食文化の「源」を体感する旅 「神話の酒を巡る旅・大神神社と紅葉の談山神社」

酒の神を祀る大神神社の神事「醸造安全祈願祭」と、紅葉の名所・談山神社の特別参拝を実施しました。地元酒蔵の地酒と料理を楽しむガストロノミーランチ、外国人にも好評だった伝統行事「蹴鞠」も体験していただきました。これまで一般参列ができなかった「醸造安全祈願祭」へ、初めてツアーとして参列しました。 (2024/11/14(木)実施)

伝統行事「蹴鞠」
神楽「うま酒みわの舞」
醸造安全祈願祭
談山神社特別参拝

1-3 有形の文化遺産を支え続ける「伝統建築工匠の技」と千年に渡る修復や勧進、再興の物語をSDGsの視点で巡る旅

今も修復を続ける薬師寺の宮大工による伽藍解説と槍鉋体験。持続可能な修復を支えるお写経勧進。当初は英語ガイドのみを予定していたが、中国語ガイドを確保し、唐招提寺ルートとして組み込むことで中華圏向けのツアーとしても実証しました。2024/11/16(土)、2024/12/6(金)、2025/1/18(土)実施

槍鉋体験
ご僧侶の解説とお写経勧進
ご僧侶の解説とお写経勧進
大工道具の歴史解説

1-4 「能楽」「雅楽」を外国人でもわかりやすく・五感で楽しめる観劇ナイトプログラム

外国人にとって難解な能楽を、通訳ガイド付きナイト観劇や能面・雅楽器体験を組み込んだワークショップとして構成したナイトプログラムを実証しました。演目にちなんだ奈良公園内の能楽ゆかりのスポットを巡る、観劇翌日のガイド付きツアーも実施しました。(2024/12/23(月)―12/24(火)・2025/1/21(火)―1/22(水)実施)

能面体験
幽玄と華麗の美学が調和する演目「春日龍神」
雅楽器体験
奈良公園内能楽ゆかりのスポット巡りガイドツアー

1-5 侘茶発祥の地・奈良で日本独自の美学、奈良公園の千数百年の歴史を五感で感じとる茶会体験

侘茶発祥の地奈良の伝統的茶会を「奈良公園の悠久の歴史」をテーマに、特別な演出、茶道に通じた通訳ガイドや翻訳ツールなどの活用でわかりやすく五感で感じる茶会として催行しました。(2025/1/21(火)実施)

伝統的な濃茶会
春日龍神にちなんだ茶道具の数々
立礼式の薄茶会
茶道に通じた通訳ガイドの案内

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