11月23日(金) 明治大学アカデミックフェスにて『~Discovering Japanese culture~日本の伝統建築の魅力とその理由』が開催されました。

2018年12月28日


平成30年11月23日(金)明治大学アカデミーホールにて、シンポジウム「~Discovering Japanese culture~日本の伝統建築の魅力とその理由」が当公益社団法人の後援により開催されました。
 第1部の基調講演では、湿板光画家で日本文化研究家のエバレット・ケネディ・ブラウン先生から、「日本の面影:匠の美意識と建築」をテーマにご講演いただきました。
アメリカのワシントン出身のE・K・ブラウン先生は、木・草・紙からできている日本の伝統的な建築物が自然を感じ感性を豊かにする空間であるとお話しされました。そして、その建築物を造る職人がただ造るだけではなく道具を清め自分の魂を吹き込んでいくことで、神聖なる空間が生み出されていることを強調されました。
一方、明治期以降、海外様式の建築物が増えていく中で日本の伝統建築の技の伝承が少しずつ途絶えていったことは憂慮すべきであり、森林が豊富な日本が古くからさまざまな部族が生み出してきた森の文化や木の文化を再認識しながら後世に伝統技術を伝承していくことが重要であると力説されました。
 第2部では、日本を代表する宮大工の小川三夫棟梁、建築家でアーティストのアズビー・ブラウン先生、国際的庭園デザイナーの烏賀陽百合先生、基調講演に引き続きE・K・ブラウン先生にもご登壇いただき、パネルディスカッション「グローバル目線で見た伝統建築・匠の技・日本庭園の魅力」が行われ、コーディネーターを明治大学政治経済学部の飯田泰之准教授が務めました。
 最初に、各先生の専門分野に関するプレゼンテーションが行われました。A・ブラウン先生は、欧米の大工と日本の大工の違いについて、欧米では寸法をきっちり合わせて仕事をするのが立派な大工だと言われるが、日本では100~1000年を経たときに自然や心がどう変化するかを考えながら仕事をするのが立派な大工であると述べられました。烏賀陽先生は、かつてニューヨークのグランドセントラルの駅構内で日本庭園を作庭するにあたり、自然石の入手や現地の植物の剪定に苦労しながらもすべて現地のものを使用することにこだわったことで快適な空間が生まれたという話をされました。小川棟梁は、弟子は師匠が「カラスは白い」と言われれば白く思えるくらいに合わせないといけないという職人の在り方と、弟子を卒業したら師匠を超えることの大切さを説かれました。また、法隆寺五重塔、薬師寺、東大寺転害門を例に、工法について宮大工ならではのお話もされました。
次に、日本の伝統建築・庭が持つ空間の設えについて各先生にお話いただきました。E・K・ブラウン先生は、ものには自分の記憶が宿っているというアフリカ人の考え方に触れ、日本の職人にもつながる精神であるとお話されました。A・ブラウン先生は、建築物は仕上げ後も木が動き続けるのでそれが完成するのは数年後であるという考え方や環境についての知恵を活かした建築は、人類が生き続けていくために必要なことであると力説されました。烏賀陽先生は、龍安寺を例に、庭園周辺の空間も重要であり周辺の空間に合わせた庭園を作庭することに意味があるとお話されました。小川棟梁は、大工の感覚は自分で経験し反省することで身に付いてくるもので、各建築物にはそこに関わった棟梁の特徴が出ていると説かれました。
 引き続き、日本に関するそれぞれのストーリーについてお伺いました。E・K・ブラウン先生は、日本独特の重みのある雰囲気を感じたという日本に来られて間もない頃のお話を、A・ブラウン先生は、西洋にはない日本の知恵、技術をひたすら勉強してきた自身の体験談を語られました。烏賀陽先生は、日本庭園の良さに気づくまでの心境の変化について、小川棟梁は、幼い頃に法隆寺の五重塔を見学した際の感動について述べられました。
最後に、日本の建築・庭園の魅力を伝えるキーポイントについて、烏賀陽先生は、日本人が本当の日本庭園とは何なのかを知り世界に発信していくことが重要であると答えられました。A・ブラウン先生は、日本人は自然との共生の方法や人間の素晴らしい匠の技の可能性を知っておりそれを世界に発信すべきであること、E・K・ブラウン先生は、自然とのかかわり方、持続可能性、本物志向こそ世界の人々が求めている日本の「匠」という気質そのものであると力説されました。そして、小川棟梁から、今の日本は伝統をあまり重要視していないことで職人が減ってきており若者に職人の魅力を知ってもらうことが何より重要である、とのお話を以ってパネルディスカッションガ終了しました。
 当日は230名の方にご来場いただき、「棟梁のお話しを聞けて良かった」「日本建築の良さを知ることができた」等のお声をいただきました。