11月11日(日) 安堵町・明治150年シンポジウム『大和維新』を開催致しました。

2018年12月21日


平成30年11月11日(日)、明治大学リバティーホールにて安堵町・明治150年記念シンポジウム「大和維新」が当公益社団法人の後援により開催されました。
第1部に先立ち、明治大学政治経済学部飯田ゼミの皆様による安堵町プロモーション動画が上映されました。飯田ゼミは地方創生研究の一環として、8~9月に現地フィールドワークを行いました。上映後、飯田泰之准教授と2名のゼミ生が登壇し、現地で感じたこと、動画や「観光マップ&観光プラン」等の作成で工夫したことなどをお話しされました。

        
 

 第1部の基調講演では、明治大学学長で能楽プロデューサーの土屋恵一郎先生に「能と安堵町」をテーマにお話しいただきました。まず、安堵町に生を受けた近代陶芸の巨匠・富本憲吉の作陶の主要なモチーフとなった「テイカカズラ」連続模様の独創性について、草間彌生のデザインを取り上げ、その共通点から、憲吉のデザインは世界に通用するとお話しいただきました。話は能に移り、奈良が能の発祥地であること、室町時代の能役者金春禅竹による愛と怨念を描いた作品「定家」の中で、美しい花を咲かせる「テイカカズラ」がまとわりついた墓石から亡霊が登場する場面をご紹介されました。その場面が激しい赤が主体のデザインに白い「テイカカズラ」の花を表現する憲吉のデザインに共通するものがあるのではないかとお話しされました。こうして安堵町の花「テイカカズラ」を介した能と安堵町の繋がりに言及しながら、最後は、富本憲吉の優れたデザイン性を世界に発信して欲しいと力説され、講演を締め括られました。
ご降壇後、去る8月のなら燈花会能にて収録された動画「金春流 能 定家」が放映されました。

    

 

 続く第2部では、歴史小説家の植松三十里先生、元春日大社権宮司で現在は奈良県立大学客員教授を務められている岡本彰夫先生、公益財団法人郡山城史跡・柳沢文庫保存会研究員の吉田栄治郎先生をパネリストとするパネルディスカッション「古代、中世、そして明治へ。大和の改革の普請」が行われ、コーディネーターを当公益社団法人専務理事の川井徳子氏が務めました。
 植松先生は、今シンポジウムに合わせて出版された歴史小説「大和維新」の著者です。執筆への経緯や、主人公今村勤三の気概を中心に今村荒男や富本憲吉の人間性についてもお話しいただきました。その上で、安堵町という小さなエリアから3名の偉人が生まれ、活躍したという事実こそが「大和維新」ではないかとお話されました。大和の歴史・文化・芸能全般に精通された岡本先生は、奈良で聖徳太子の近臣秦河勝から生まれたという能、とりわけ五穀豊穣を願って作られた田楽能と中国から伝わったとされる猿楽能の歴史についてスライド交え詳しく説明され、こうした伝統文化を近年以降継承できなかった明治政府の功罪についても言及されました。そして、安堵町・広く大和の歴史に精通した吉田先生からは、明治期における奈良の豊かさや合理性、安堵町の地の利の良さを背景に、合理性を身に着けた今村勤三により奈良県再設置や殖産興業化が成し遂げられたとのお話がありました。
 2巡目に移り、植松先生から、今村勤三の成し得たことは今日でも普遍的なテーマであり、地方は誇りを、そして安堵町は富本憲吉のデザインを世界に発信すべし、との激励がありました。また、岡本先生は、大和は日本人の心の拠り所であり日本の権威の場所であるとした上で、神仏に最高の礼を尽くす時代の到来が悲願だと力説されました。さらに、吉田先生は、今村勤三が奈良県に奨学金制度を設立したことを紹介し、教育の大切さを説かれました。

 岡本先生からの日本の誇りを取り戻す場所である大和に足を運び大和の良さを肌で感じて欲しいとのお言葉を締めに、パネルディスカッションが終了しました。
 当日は約170名の方々がご来場され、「安堵町という町を知ることができて良かった。」「訪れてみたい。」等のお声をいただくことができました。