当法人は、令和7年度より奈良教育大学との共同研究に取り組んでまいりました。1400年前に制定された憲法十七条は、「和をもって貴しとなす」という言葉で日本では広く知られており、日本人の心の在り方や価値観の形成に、歴史的にも現代においても大きな影響を与えてきました。本研究では、この憲法十七条を、当時の国際情勢を踏まえてとらえ直すこと、「管子」や「五経」など中国古代文献の原点と照らし合わせることなど、最新の研究成果を踏まえて再検討するものです。さらに、ユネスコの新教育勧告を踏まえ、平和教育を沖縄や広島などにおける戦争の悲惨さから学ぶ教育にとどまらず、「戦争や暴力を未然に防ぐための文化を培う」新たな平和教育の開発を目標としています。
【共同研究者】
奈良教育大学教育連携講座 特任教授 中澤静男
奈良教育大学教育連携講座 准教授 河野晋也
奈良教育大学ESD・SDGsセンター 研究部員 加藤久雄
公益社団法人ソーシャル・サイエンス・ラボ 専務理事 川井徳子 他8名
【研究題目および概要】
憲法十七条のユネスコ新教育勧告を通した再解釈
憲法十七条を、当時の国際情勢を踏まえて捉えなおす。
また、ユネスコの新教育勧告を踏まえて沖縄・広島等の戦争の悲惨さから学ぶ平和教育だけでなく、「戦争や暴力を未然に防ぐための文化を培う」新たな平和教育を開発する。
兵庫県太子町出張研修集合写真
鵤荘勝示石(いかるがのしょうぼうじいし)_左側
太子町斑鳩寺
斑鳩寺三重塔
| 日付 | 区分・内容 | 会場・実施場所 |
|---|---|---|
| 8月15日 | 聖徳太子ゆかりの地巡検 | 兵庫県太子町 |
| 8月21日 | 法隆寺巡検 | 法隆寺 |
| 9月21日 | 国際シンポジウム「平和教育の多様性と体系化」 | 広島大学東千田キャンパス |
| 11月24日 | 太子道巡検:聖徳太子の宮をつなぎ、日々巡り歩いたゆかりの道とされる「太子道」をたどる。 【ルート】(斑鳩町)法隆寺⇒中宮寺跡遺跡⇒黒駒(太子愛馬)古墳⇒調子丸古墳⇒上宮遺跡公園⇒(安堵町)⇒飽波神社⇒(安堵町)極楽寺・広島大仏(広島との平和交流シンボル)⇒(川西町)油掛け地蔵⇒(三宅町)屛風杵築神社⇒(田原本町)忍性菩薩誕生碑 |
太子道フィールド |
| 3月20-21日 | 東京国立博物館 法隆寺宝物館・鹿島神宮 | 東京都・茨城県 |
| 日付 | 区分 | 概要 | 会場・実施場所 |
|---|---|---|---|
| 6月23日 | 第1回研究会 |
教材解釈 ユネスコ教育勧告について 教材解釈 憲法十七条を老荘思想で読む |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
| 7月24日 | 第2回研究会 |
教材解釈 ガルトゥング平和学入門 教材解釈 東野治之『聖徳太子 本当の姿を求めて』 |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
| 10月1日 | 第3回研究会 |
国際シンポジウム「平和教育の多様性と体系化」 参加報告 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第一章 ユヴアル・ノア・ハラリ 教材解釈 『聖徳太子』吉村武彦著 ・序章~第一章 厩戸王子の誕生 |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
| 11月7日 | 第4回研究会 |
近畿ブロック・ユネスコ活動研究会in長浜 参加報告 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第2章 ティモシー・スナイダー 教材解釈 『聖徳太子』 ・第2章 太子としての「まつりごと」 |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
| 12月11日 | 第5回研究会 |
ユネスコスクール全国大会参加報告 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第3章 ポール・グルークマン 教材解釈 『聖徳太子』 ・第3章 斑鳩寺建立と仏教信仰 |
ホテルソビアル なんば大国町 |
| 1月13日 | 第6回研究会 |
奈良の鹿と「平和」の関連について 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第4章 ジャック・アタリ |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
| 2月9日 | 第7回研究会 |
教材解釈 『聖徳太子』・第4章 聖徳太子像の形成 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第5章 ラリー・ダイアモンド 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第6章 ジョセフ・ナイ 教材解釈 『ウクライナ危機後の世界』 ・第7章 エリオット・ヒギンズ |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
| 3月10日 | 第8回研究会 |
教材解釈 『社会的共通資本』 ・第1章 社会的共通資本の考え方 教材解釈 『共感の論理――日本から始まる教育革命』 ・序章 近代の矛盾とポスト近代の価値観 |
奈良教育大学 ESD・SDGsセンター |
2023年にユネスコが50年ぶりに教育勧告を改定し、各国に対して「平和・人権の教育の確立」を求めた国際的潮流を受け、日本の歴史的規範である憲法十七条を現代的視座から再解釈し、新たな平和教育モデルを構築することを目的として令和7年度より研究会を開始しました。ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザ情勢など、国際社会では武力紛争と人権侵害が深刻化しており、平和の文化創造において教育が果たすべき役割は一段と重要性を増しております。こうした状況を踏まえ、本研究では、歴史的価値と普遍的規範性を併せ持つ憲法十七条を、平和・人権教育の資源として再評価いたしました。「和をもって貴しとなす」を第一条におく憲法十七条は、日本人の価値観形成に長く影響してきましたが、昨今では、暗記すべき歴史事象にとどまる傾向がみられます。
令和7年度の本研究においては、複数回の定例研究会及び国内のフィールドワークを通じて、第一に東アジアの外交秩序、仏教思想の受容など当時の国際環境を即して、また冠位十二階の制定や有力豪族の覇権争いといった国内政治との関連などとの関係から憲法十七条を政治思想史的に再定位しました。第二に、「菅子」や「五経」など中国古典との思想源流比較を行い条文に内在する規範概念の由来と構造的変容を最新研究に基づいて検討しました。これにより、従来の単純化された理解から脱し、「平和・対話・倫理観」を軸とする普遍性を持った価値体系を理論的に再構築しました。
本研究では文献研究だけでなく、聖徳太子ゆかりの地である兵庫県太子町、法隆寺、太子道、東京国立博物館、鹿島神宮等において現地調査を実施し、歴史資料と現地環境の両面から検証を行いました。
令和8年度は、これまでの知見を踏まえ、ESD(持続可能な開発のための教育)の理念に基づく平和教育教材を開発します。沖縄・広島など負の歴史遺産から学ぶ従来の平和教育に加え、「戦争や暴力を未然に防ぐ文化」の醸成を重視し、憲法十七条を基盤とした「奈良ならではの平和観」を明確化します。対話型学習を中心としたカリキュラムを構築し、教育旅行や文化観光への活用も視野に入れた学習観光モデルの展開を図ります。また、ネイチャーポジティブの観点から自然環境の回復と持続可能な社会の担い手育成につながる教材開発と共同研究を進めます。これらにより、地域機関と連携した総合的平和教育モデルを確立し、奈良を国内外に発信します。さらに、学際的研究チームとの協働を深め、奈良発の先進的ESDモデルとして発展させます。加えて、文科省副大臣との対談を通じ、ユネスコ2023年勧告に応答する実践モデルとして位置付けます。
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