【プロジェクト】日本の伝統建築技術等を無形文化遺産に

当公益社団法人では、日本文化の基である「木の文化」に着目し、林業に関連する技も含めて、日本建築、作庭、築石等の「匠の技」の無形文化遺産登録を目指す活動を推進・支援しています。

 

奈良県には1993 年に我が国初のユネスコ世界文化遺産に登録された世界最古の木造建造物である法隆寺ほか多くの世界文化遺産があります。
そして、法隆寺はいまも大工の神、心技一体のシンボルである聖徳太子を祀る寺として信仰の対象になっています。
一方、これらの背景にある生きた自然の素材を加工して利用する伝統的日本建築並び作庭、石垣建造などの精巧な技術を新たなユネスコの無形文化遺産に推挙し、登録を目指す活動が始まっています。
当公益社団法人では、これらの技術や生業を未来につなげるため無形文化遺産登録を目指して活動している、2014年に発足した「伝統木造技術文化遺産準備会」の趣旨に賛同し、昨年度より同会との協力のもとで独自に活動を進めています。日本文化の源流である奈良、木の文化とともに磨かれてきた「普請の技」が失われると、継承されてきた茶の文化をはじめ礼儀、作法まで含めた日本の伝統文化そのものが廃れてしまう可能性があるからです。
「伝統木造技術文化遺産準備会」は哲学者の梅原猛氏が顧問、国立京都迎賓館の伝統的技能活用検討委員会委員長だった数奇屋建築の第一人者である中村昌生氏が会長の民間の組織で、伝統的な構法を内外に紹介し広めることによって、ユネスコの無形文化財遺産登録を目指す会です。
また、この会は登録をゴールではなく新たなスタートとして、日本の美しい原風景を残し、職人の技術や暮らしを守りつつ豊かな緑とともに生きる持続可能な社会を創出することを最終目標にして活動しています。

 

 

地元・奈良の地域活性化を目指して

奈良県は県土の約80%を森林が占める森林県で、特に吉野地方は豊かな土壌に加えて年間雨量や平均気温にも恵 まれ、年輪幅が細かく強度に優れ節の少ない日本屈指の良質材の産地として知られています。
ともすれば、樹木の伐採は環境破壊、地球温暖化につながると誤解されがちですが、若くて成長の活発な樹木ほど二酸化炭素の吸収量が多く、植林・間伐・伐採の管理されたサイクル確立が地元の林業の存続の鍵となっています。
しかし、現実は厳しく外材の輸入増加によって、国産材の価格は30年前の3分の1にまで落ち込んでいます。さらに需要の約60%を建設用材が占めていますが、間伐材などを利用した集成材や合板など低コストの利用が大半で、木材が本来持っている特質が生かされていない現実があります。
当公益社団法人としても、地元産業の活性化のためには、林業の衰退、建築関連の大工を始めとする職人の技の継承が危ぶまれている現実にどのように対処して道筋を提示できるかが、大きな課題でした。

 

省庁をまたぐ無形文化遺産登録を目指す会にも参画

2013年の和食、日本人の伝統的な食文化の無形文化遺産は国内外から注目され、多大な経済効果を生んでいます。伝統建築等にかかわる技の素晴らしさが世界に認知されることにより、生業、国内諸産業の活性化のみならず海外からの観光客増加にもつながります。
こうした観点に立脚して、「伝統木造技術文化遺産準備会」などの働きかけによって今年の2月下旬には内閣府、文化庁、国土交通省など諸省庁承諾のもとで、元文化庁長官の佐々木正峰氏が会長、哲学者の梅原猛氏が名誉顧問の全 国組織「日本の『匠の技』の保存・活用とユネスコ無形文化遺産登録を推進する会」が発足しています。また、当公益社団法人もこの会に事務局として参加しています。

 

佐々木正峰会長(左) 梅原猛顧問(中央) 中村昌生副会長(右)

 

次年度、奈良でシンポジウム開催

 次年度の2016年度には「日本『匠の技』の保存・活用とユネスコ無形文化遺産登録を推進する会」発足後の対外的な活動を、当公益社団法人と伝統木造技術文化遺産準備会の共同主催で、まず奈良から始めることが決まっています。
6月24日(土)、奈良春日野国フォーラム甍~ I・RA・KA ~に於いて、2020年東京オリンピック新国立競技場設計者の隈研吾氏を招き、「日本の伝統建築技術と木の文化の未来」という講演&シンポジウムを開催する予定です。
シンポジュウムには鈴木嘉吉氏(元奈良国立文化財研究所長)、木曽功氏(千葉科学技術大学長)、進士五十八氏(福井県立大学長)が参加、コーディネーターを当公益社団法人の川井徳子専務理事が務めます。