【プロジェクト】伝統建造物に関連する匠の技を無形文化遺産に

当公益社団法人は、日本の伝統的建造物に関連する匠の技をユネスコ無形文化遺産に登録する運動を推進・サポートしています。

 

無形文化遺産がもたらす波及効果

 日本の原風景をかたちづくる伝統的な建築や町並み。それらをつくり、支えてきたのが伝統建築構法です。木や土のように生きている自然の素材を加工して利用する伝統的な日本建築並びに作庭、石垣建造などの精巧な技術は、我が国独自のもので、外国には例がありません。そして、これらの技術が継承されてきた背景には、自然と共に生き、自らもまた大いなる自然の一部だと感得しつつ、常に素材の特質に目を向けて技術を磨いてきた日本人の努力と英知の蓄積があります。
 しかし、これらの技術は、高度経済成長以降の産業構造の変化や日本人の価値観・生活スタイルの変化等により厳しさを増しています。建築基準法の壁や後継者不足等の問題を抱え、存亡の危機に瀕しているとも言われ、とりわけ豊かな森林資源を有し法隆寺等の伝統木造建築物が数多く存在する奈良県では、林業や伝統産業の衰退は地元経済への大きな打撃となっています。
 さて、2013年に日本の伝統的な食文化(和食)がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで国内外に「和食ブーム」がまき起こり、関連業界に大きな経済効果をもたらしました。日本の建設業の市場規模は約50兆円です。伝統的な食文化と同様、伝統建築構法並びに伝統的な建築に関連する匠の技術がユネスコ無形文化遺産として登録されることで、日本的景観の保護、観光資源としての日本のまちづくりによる外国人観光客の増加、国内森林資源の活用による林業の再生・活性化と自然との共生による持続可能な社会の構築(SDGs)、後継者育成によるこれらの技術の保護・継承の促進等、建設(建築及び土木)や住宅産業分野を中心に「和食ブーム」にも勝る大きな経済効果と波及効果が生まれ、地域及び日本経済の創生・活性化が期待できます。

 

 

無各省庁・業界を巻き込んだ All Japan の取り組みへ

 伝統建築構法並びに伝統的な建築に関連する匠の技術のユネスコ無形文化遺産登録への活動を主導してきたのは、2014年末に梅原猛氏(哲学者)が呼びかけ人代表、中村昌生氏(京都工芸繊維大学名誉教授)を会長として発足した「伝統木造技術文化遺産準備会」です。2015年3月のキックオフフォーラム以降、「伝統構法:日本建築の匠の技をユネスコ無形文化遺産に!」というスローガンのもと、さまざまな活動を展開、当公益社団法人も同会の設立趣旨に賛同し、こうした活動をサポートしてきました。
 その一環として、6月24日、奈良春日野国際フォーラム甍〜I・RA・KA〜能楽ホールにおいて、「日本の伝統建築技術と木の文化の未来〜ユネスコ無形文化遺産登録へ〜」講演&シンポジウムを「伝統木造技術文化遺産準備会」と当公益社団法人の共同主催で開催しました。伝統木造技術文化遺産準備会長の中村昌生氏の開演挨拶、奈良県知事の荒井正吾氏の来賓挨拶で始まり、2020年東京オリンピック新国立競技場の設計者である隈研吾氏(東京大学教授、建築家)の講演「新国立競技場と和の建築」、鈴木嘉吉氏(元奈良国立文化財研究所長)、木曽功氏(千葉科学大学長、元ユネスコ全権大使)、進士五十八氏(福井県立大学長、元日本造園学会長)によるパネルディスカッション「匠の技から学び豊かな未来に」と続き、当公益社団法人の川井徳子専務理事がパネルディスカッションのコーディネーターを務めました。
 今回の講演&シンポジウムを通じ、伝統的建造物に関連する匠の技のユネスコ無形文化遺産登録への気運を高めてきました。そうした折、2018年2月に開催された無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議において、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が、2020年に登録されるユネスコ無形文化遺産(人類の無形文化遺産の代表的な一覧表)への提案案件として決定されました。しかし、その対象範囲は一部の伝統木造建築の保存・修理技術の範囲に留まっており、伝統的建造物に関連する匠の技全体をカバーするものではありません。そこで、中村昌生氏が会長を務める「一般社団法人 伝統を未来につなげる会」と当公益社団法人とが中心となり、対象範囲を広げることを要望、関連省庁や業界、政界、学会を巻き込んだAll Japanとしての活動を開始します。

 

 

東京でフォーラム開催

次年度早々には、「一般社団法人 伝統を未来につなげる会」に「伝統木造技術文化遺産準備会」を統合し、新体制にて、拡大された申請範囲での2020年(オリンピックイヤーでもある)ユネスコ無形文化遺産登録への活動をより強力に展開します。
 この活動の1つとして、2018年4月28日、明治大学アカデミーホールにおいて、「普請文化フォーラム2018」(※)を「一般社団法人 伝統を未来につなげる会」の主催、当公益社団法人の共催で開催します。中村昌生会長の開催挨拶の後、内田祥哉氏(東京大学名誉教授、建築家)の基調講演「日本建築の伝統的な価値を巡って」、千田嘉博氏(奈良大学教授、城郭考古学者)の特別講演「加藤清正の名城熊本城の大普請」を行います。続いて「伝統建築技術の継承・活用で切り拓く日本の未来」をテーマとするパネルディスカッションを、コーディネーターに後藤治氏(工学院大学理事長)、パネリストに島崎英雄氏(専門学校職藝学院オーバーマイスター)、進士五十八氏(福井県立大学長、造園学者)、小林正美氏(明治大学副学長、建築家・都市デザイナー)、飯田泰之氏(明治大学政治経済学部准教授)を招いて行います。


(※)普請とは…家を建築したり修理したりすること。建築工事。また、道・橋・水路・堤防などの土木工事。(出典『デジタル大辞泉』(小学館))

【プロジェクト】日本の伝統建築技術等を無形文化遺産に

当公益社団法人では、日本文化の基である「木の文化」に着目し、林業に関連する技も含めて、日本建築、作庭、築石等の「匠の技」の無形文化遺産登録を目指す活動を推進・支援しています。

 

奈良県には1993 年に我が国初のユネスコ世界文化遺産に登録された世界最古の木造建造物である法隆寺ほか多くの世界文化遺産があります。
そして、法隆寺はいまも大工の神、心技一体のシンボルである聖徳太子を祀る寺として信仰の対象になっています。
一方、これらの背景にある生きた自然の素材を加工して利用する伝統的日本建築並び作庭、石垣建造などの精巧な技術を新たなユネスコの無形文化遺産に推挙し、登録を目指す活動が始まっています。
当公益社団法人では、これらの技術や生業を未来につなげるため無形文化遺産登録を目指して活動している、2014年に発足した「伝統木造技術文化遺産準備会」の趣旨に賛同し、昨年度より同会との協力のもとで独自に活動を進めています。日本文化の源流である奈良、木の文化とともに磨かれてきた「普請の技」が失われると、継承されてきた茶の文化をはじめ礼儀、作法まで含めた日本の伝統文化そのものが廃れてしまう可能性があるからです。
「伝統木造技術文化遺産準備会」は哲学者の梅原猛氏が顧問、国立京都迎賓館の伝統的技能活用検討委員会委員長だった数奇屋建築の第一人者である中村昌生氏が会長の民間の組織で、伝統的な構法を内外に紹介し広めることによって、ユネスコの無形文化財遺産登録を目指す会です。
また、この会は登録をゴールではなく新たなスタートとして、日本の美しい原風景を残し、職人の技術や暮らしを守りつつ豊かな緑とともに生きる持続可能な社会を創出することを最終目標にして活動しています。

 

 

地元・奈良の地域活性化を目指して

奈良県は県土の約80%を森林が占める森林県で、特に吉野地方は豊かな土壌に加えて年間雨量や平均気温にも恵 まれ、年輪幅が細かく強度に優れ節の少ない日本屈指の良質材の産地として知られています。
ともすれば、樹木の伐採は環境破壊、地球温暖化につながると誤解されがちですが、若くて成長の活発な樹木ほど二酸化炭素の吸収量が多く、植林・間伐・伐採の管理されたサイクル確立が地元の林業の存続の鍵となっています。
しかし、現実は厳しく外材の輸入増加によって、国産材の価格は30年前の3分の1にまで落ち込んでいます。さらに需要の約60%を建設用材が占めていますが、間伐材などを利用した集成材や合板など低コストの利用が大半で、木材が本来持っている特質が生かされていない現実があります。
当公益社団法人としても、地元産業の活性化のためには、林業の衰退、建築関連の大工を始めとする職人の技の継承が危ぶまれている現実にどのように対処して道筋を提示できるかが、大きな課題でした。

 

省庁をまたぐ無形文化遺産登録を目指す会にも参画

2013年の和食、日本人の伝統的な食文化の無形文化遺産は国内外から注目され、多大な経済効果を生んでいます。伝統建築等にかかわる技の素晴らしさが世界に認知されることにより、生業、国内諸産業の活性化のみならず海外からの観光客増加にもつながります。
こうした観点に立脚して、「伝統木造技術文化遺産準備会」などの働きかけによって今年の2月下旬には内閣府、文化庁、国土交通省など諸省庁承諾のもとで、元文化庁長官の佐々木正峰氏が会長、哲学者の梅原猛氏が名誉顧問の全 国組織「日本の『匠の技』の保存・活用とユネスコ無形文化遺産登録を推進する会」が発足しています。また、当公益社団法人もこの会に事務局として参加しています。

 

佐々木正峰会長(左) 梅原猛顧問(中央) 中村昌生副会長(右)

 

次年度、奈良でシンポジウム開催

 次年度の2016年度には「日本『匠の技』の保存・活用とユネスコ無形文化遺産登録を推進する会」発足後の対外的な活動を、当公益社団法人と伝統木造技術文化遺産準備会の共同主催で、まず奈良から始めることが決まっています。
6月24日(土)、奈良春日野国フォーラム甍~ I・RA・KA ~に於いて、2020年東京オリンピック新国立競技場設計者の隈研吾氏を招き、「日本の伝統建築技術と木の文化の未来」という講演&シンポジウムを開催する予定です。
シンポジュウムには鈴木嘉吉氏(元奈良国立文化財研究所長)、木曽功氏(千葉科学技術大学長)、進士五十八氏(福井県立大学長)が参加、コーディネーターを当公益社団法人の川井徳子専務理事が務めます。